一般的な質問
ステージCの肺水腫になり命に関わる可能性があります。その他、不整脈の合併、左心房の破裂などが起きることもあります。手術をしない場合は内科治療を継続します。
形成術は自分の僧帽弁を温存する方法であり、置換術は生体弁、機械弁などの人工弁を埋め込む手術です。動物では体の大きさと、抗血栓療法の観点から置換術を行うことはほとんどありません。
ステージB2、C、Dで手術を実施しています。心拡大があり、将来肺水腫になる可能性がある患者さんでは積極的に手術を実施しています。ステージDの腎不全、栄養状態悪化、腹水貯留などを発症している患者さんでは、手術の負担に耐えられなくなっている場合もあります。
投薬をやめることができる可能性が非常に高いのと、健康寿命が延ばせることです。術後3カ月程度は投薬が必要ですが、それ以降薬を服用する患者さんは非常に少ないです。術前の状態によります。
旅行は行けるようになることが多いです。海外から来た患者さんは飛行機で帰国されているので、飛行機にのる負担は軽減されるかと思います。
手術の準備と事前説明に関する質問
HPに詳細を載せているので参考にしてください。血液検査はフルスクリーニング、腹部も含めて検査を行います。心臓の治療ですが、高齢の患者さんでは腹部に腫瘤があることもあり、必ず徹底した検査を実施します。
基本的にありません。よくある質問は、歯科のスケーリングのことを聞かれます。感染の観点からできません。また、心臓手術の時にはヘパリンという血液をさらさらにする薬を使用していることから、皮膚腫瘤摘出のような手術も実施しません。
スクリーニング検査を受けていただき、インフォームドコンセントに納得していただけましたら自身で特別準備することはありません。まれに肥満体型の患者さんには、減量してもらうこともあります。
初診時に問診して、やめてほしいことがあればお伝えします。基本的にはいつも通り、今飲んでいる薬をしっかりのみ、普段の生活を変えないでもらっています。
HPに記載しているのと、インフォームドコンセントで確認してください。現在、ICU移動率はすべてのステージで100%近くになっています。術後の合併症は、術前の状態にも影響されます。重篤な合併症の割合は、数%以下になっています。
手術の具体的な内容に関する質問
開胸手術となっています。肋間開胸といって、骨自体は切りません。開胸部位の傷口はおおよそ4-5cm程度となっています。当院での手術は低侵襲になるように傷は小さくなるようにしておりますが、視野が得られなくなるような場合は、傷が大きくなることもあります。安全性が第一だと考えています。
カテーテル治療は、人工心肺を使用しないため、比較的低侵襲であり、入院期間も3日程度です。弁逆流が残存して内科治療が継続となることがあります。
それぞれメリット、デメリットがあります。高齢者や、手術リスクの高い患者では長時間の麻酔、人工心肺の負担を考えてカテーテル治療が好ましいケースもあります。一方で、僧帽弁形成術は、逆流の制御率が高く、内科治療を必要としなくなる症例がいるため根治的治療になることが多いです。獣医師の説明をしっかり受けたうえで選択してください。
腱索の再建と、弁輪の縫縮が主な手術内容となっています。再建する腱索の本数は5-8本程度となっています。その他、弁同士を縫合したりして弁形成を行います。
全体の2-3%程度で、逆流が残存、再発することがあります。心臓が重度に大きい場合、弁の変性が重度である場合に起こりえます。通常、逆流そのものは軽減されていることが多いため投薬は減ることが多いです。現状ほとんど再手術はしていません。ヒトでは形成がどうしても困難な場合は人工弁を適応することがありますが、動物では適応困難であることが再手術に踏み出せない理由にもなっています。
麻酔と術中管理に関する質問
麻酔リスクはすべての患者にあると考えています。麻酔導入中に亡くなってしまうような経験はありません。
麻酔管理はしっかりとした疼痛管理をおこないつつ実施しており、その間に心臓を止めて手術を行います。
僧帽弁形成術を実施する場合は必須となります。カテーテル治療では使いません。
心臓外科麻酔は通常手術の麻酔よりも気を使うことが多いです。低体温にしたり、体外循環を行い心臓を止めるような特殊な手術ですので、心拍数、血圧、尿量、各種血液検査などモニタリングが非常に重要です。
問題が出ないようにし続けています。問題が出た場合は、速やかに対処していきます。小さな問題も心臓手術の場合は、あとから悪化することがあります。手術中に問題があった場合は、術後の説明でお伝えします。
術後の回復とケアに関する質問
7-14日程度の入院と説明しています。7日前後が多くなっています。
あきらかな疼痛所見は、次の日までです。動物は話せないのではっきりとはわかりませんが、術後12-24時間程度は麻薬と呼ばれる強い痛み止めで痛みを取り除いてあげます。痛みの状況を確認して追加する場合があります。
食事をとること、排尿、排便などは、術後1-2日でできるようにしていきます。ステージDで筋力が低下している症例では、立位補助などのリハビリをしていき、少しずつ、入院期間中にも歩行などの運動を行わせます。
退院した後は、外で軽い散歩もできますし、ご自宅では基本的に制限はありません。激しい運動は控えてもらいます。術後1か月では積極的に散歩してもらい、2か月検診時には、今まで通りの生活になっていることが多いです。
トリミング、ワクチンなどの予防薬は術後1か月で安定していれば、少しずつ初めてもらっています。
合併症・リスクに関する質問
2023,2024年では感染性心内膜炎を起こした患者さんは0です。血液培養で感染を疑った症例は、1%以下です。
特にステージC,Dの患者さんで心拡大が重度の症例
HPの合併症リストをご確認ください。想定されない合併症が起こる可能性は低いです。一方で、予想外の合併症が起こることもありますので、術前の病態把握、術中に問題が起きない、術後管理の徹底が非常に重要です。
ステージC以上では術後に心房細動が新たに発生することはありますが、通常は内科治療での経過観察ともに安定していきます。
手術が終わり1か月安定している患者さんでは再発する可能性は低く、ほとんど見たこともありません。
その他の質問
僧帽弁閉鎖不全症の手術が終わった後の予後は良好です。3ケ月検診を終えた患者さんのほとんどが1年検診を迎えます。長期の患者さんだと術後7-8年を迎えている患者さんもいます。HPにもデータは記載されていますが、2024年から長期生存率の解析を開始していきます。もともと、左心だけでなく、右心不全を呈しているような患者さんは、術後に肺高血圧の継続または悪化などがみられることもあります。術後1-2年して、右心不全が出てくることもあるため、術後1年超えても6か月おき程度の検診を推奨しています。
術後安定している患者さんは、食事をしっかりとってもらっていて、特別心臓用処方食などは推奨していません。年齢に見合ったものを食べてもらっています。ヒトと同様、足腰が弱ってくる子が多いので、運動も積極的に実施してもらっています。