心臓外科に関するよくある質問

一般的な質問

Q
僧帽弁閉鎖不全症は、手術をしないとどうなりますか?
A

ステージCの肺水腫になり命に関わる可能性があります。その他、不整脈の合併、左心房の破裂などが起きることもあります。手術をしない場合は内科治療を継続します。

Q
僧帽弁形成術と僧帽弁置換術の違いは何ですか?
A

形成術は自分の僧帽弁を温存する方法であり、置換術は生体弁、機械弁などの人工弁を埋め込む手術です。動物では体の大きさと、抗血栓療法の観点から置換術を行うことはほとんどありません。

Q
手術を行うベストなタイミングはいつですか?
A

ステージB2、C、Dで手術を実施しています。心拡大があり、将来肺水腫になる可能性がある患者さんでは積極的に手術を実施しています。ステージDの腎不全、栄養状態悪化、腹水貯留などを発症している患者さんでは、手術の負担に耐えられなくなっている場合もあります。

Q
僧帽弁手術を受けることで期待できるメリットは何ですか?
A

投薬をやめることができる可能性が非常に高いのと、健康寿命が延ばせることです。術後3カ月程度は投薬が必要ですが、それ以降薬を服用する患者さんは非常に少ないです。術前の状態によります。

Q
手術が無事に終わると旅行にもいけますか?
A

旅行は行けるようになることが多いです。海外から来た患者さんは飛行機で帰国されているので、飛行機にのる負担は軽減されるかと思います。

手術の準備と事前説明に関する質問

Q
手術の前にどのような検査が必要ですか?
A

HPに詳細を載せているので参考にしてください。血液検査はフルスクリーニング、腹部も含めて検査を行います。心臓の治療ですが、高齢の患者さんでは腹部に腫瘤があることもあり、必ず徹底した検査を実施します。

Q
他の心臓手術も一緒に行うことはありますか?
A

基本的にありません。よくある質問は、歯科のスケーリングのことを聞かれます。感染の観点からできません。また、心臓手術の時にはヘパリンという血液をさらさらにする薬を使用していることから、皮膚腫瘤摘出のような手術も実施しません。

Q
僧帽弁手術のために特別な準備が必要ですか?
A

スクリーニング検査を受けていただき、インフォームドコンセントに納得していただけましたら自身で特別準備することはありません。まれに肥満体型の患者さんには、減量してもらうこともあります。

Q
術前に気をつけること、やってはいけないことはありますか?
A

初診時に問診して、やめてほしいことがあればお伝えします。基本的にはいつも通り、今飲んでいる薬をしっかりのみ、普段の生活を変えないでもらっています。

Q
術前のリスクや合併症の可能性はどのくらいありますか?
A

HPに記載しているのと、インフォームドコンセントで確認してください。現在、ICU移動率はすべてのステージで100%近くになっています。術後の合併症は、術前の状態にも影響されます。重篤な合併症の割合は、数%以下になっています。

手術の具体的な内容に関する質問

Q
手術は開胸手術ですか、それとも低侵襲手術(内視鏡手術やロボット支援手術など)ですか?
A

開胸手術となっています。肋間開胸といって、骨自体は切りません。開胸部位の傷口はおおよそ4-5cm程度となっています。当院での手術は低侵襲になるように傷は小さくなるようにしておりますが、視野が得られなくなるような場合は、傷が大きくなることもあります。安全性が第一だと考えています。

Q
カテーテル治療があるとききましたが、受けられますか?
A

カテーテル治療は、人工心肺を使用しないため、比較的低侵襲であり、入院期間も3日程度です。弁逆流が残存して内科治療が継続となることがあります。

Q
僧帽弁形成術とカテーテル治療はどちらがいいですか?
A

それぞれメリット、デメリットがあります。高齢者や、手術リスクの高い患者では長時間の麻酔、人工心肺の負担を考えてカテーテル治療が好ましいケースもあります。一方で、僧帽弁形成術は、逆流の制御率が高く、内科治療を必要としなくなる症例がいるため根治的治療になることが多いです。獣医師の説明をしっかり受けたうえで選択してください。

Q
僧帽弁形成術は、どのような手術ですか?
A

腱索の再建と、弁輪の縫縮が主な手術内容となっています。再建する腱索の本数は5-8本程度となっています。その他、弁同士を縫合したりして弁形成を行います。

Q
弁形成術が成功しない場合、再手術の可能性はどのくらいありますか?
A

全体の2-3%程度で、逆流が残存、再発することがあります。心臓が重度に大きい場合、弁の変性が重度である場合に起こりえます。通常、逆流そのものは軽減されていることが多いため投薬は減ることが多いです。現状ほとんど再手術はしていません。ヒトでは形成がどうしても困難な場合は人工弁を適応することがありますが、動物では適応困難であることが再手術に踏み出せない理由にもなっています。

麻酔と術中管理に関する質問

Q
全身麻酔をかけるときのリスクはありますか?
A

麻酔リスクはすべての患者にあると考えています。麻酔導入中に亡くなってしまうような経験はありません。

Q
麻酔が効いている間に心臓が止まるのですか?
A

麻酔管理はしっかりとした疼痛管理をおこないつつ実施しており、その間に心臓を止めて手術を行います。

Q
人工心肺装置の使用は必須ですか?
A

僧帽弁形成術を実施する場合は必須となります。カテーテル治療では使いません。

Q
麻酔で注意していることは何ですか?
A

心臓外科麻酔は通常手術の麻酔よりも気を使うことが多いです。低体温にしたり、体外循環を行い心臓を止めるような特殊な手術ですので、心拍数、血圧、尿量、各種血液検査などモニタリングが非常に重要です。

Q
手術中に問題が発生した場合の対応方法は?
A

問題が出ないようにし続けています。問題が出た場合は、速やかに対処していきます。小さな問題も心臓手術の場合は、あとから悪化することがあります。手術中に問題があった場合は、術後の説明でお伝えします。

術後の回復とケアに関する質問

Q
術後どれくらいの期間、病院に滞在する必要がありますか?
A

7-14日程度の入院と説明しています。7日前後が多くなっています。

Q
術後の痛みはどのくらい続きますか?
A

あきらかな疼痛所見は、次の日までです。動物は話せないのではっきりとはわかりませんが、術後12-24時間程度は麻薬と呼ばれる強い痛み止めで痛みを取り除いてあげます。痛みの状況を確認して追加する場合があります。

Q
術後にリハビリが必要ですか?必要な場合、どのようなリハビリですか?
A

食事をとること、排尿、排便などは、術後1-2日でできるようにしていきます。ステージDで筋力が低下している症例では、立位補助などのリハビリをしていき、少しずつ、入院期間中にも歩行などの運動を行わせます。

Q
術後どれくらいで日常生活に復帰できますか?
A

退院した後は、外で軽い散歩もできますし、ご自宅では基本的に制限はありません。激しい運動は控えてもらいます。術後1か月では積極的に散歩してもらい、2か月検診時には、今まで通りの生活になっていることが多いです。

Q
トリミングや、予防薬などはいつから?
A

トリミング、ワクチンなどの予防薬は術後1か月で安定していれば、少しずつ初めてもらっています。

合併症・リスクに関する質問

Q
感染症のリスクはどのくらいありますか?
A

2023,2024年では感染性心内膜炎を起こした患者さんは0です。血液培養で感染を疑った症例は、1%以下です。

Q
術後の血栓や塞栓症のリスクはありますか?
A

特にステージC,Dの患者さんで心拡大が重度の症例

Q
術後に新たに起こる可能性のある合併症にはどのようなものがありますか?
A

HPの合併症リストをご確認ください。想定されない合併症が起こる可能性は低いです。一方で、予想外の合併症が起こることもありますので、術前の病態把握、術中に問題が起きない、術後管理の徹底が非常に重要です。

Q
心房細動など、術後に不整脈が起こる可能性はありますか?
A

ステージC以上では術後に心房細動が新たに発生することはありますが、通常は内科治療での経過観察ともに安定していきます。

Q
心臓弁が再度損傷するリスクはどれくらいありますか?
A

手術が終わり1か月安定している患者さんでは再発する可能性は低く、ほとんど見たこともありません。

その他の質問

Q
手術が終わった後の予後は?
A

僧帽弁閉鎖不全症の手術が終わった後の予後は良好です。3ケ月検診を終えた患者さんのほとんどが1年検診を迎えます。長期の患者さんだと術後7-8年を迎えている患者さんもいます。HPにもデータは記載されていますが、2024年から長期生存率の解析を開始していきます。もともと、左心だけでなく、右心不全を呈しているような患者さんは、術後に肺高血圧の継続または悪化などがみられることもあります。術後1-2年して、右心不全が出てくることもあるため、術後1年超えても6か月おき程度の検診を推奨しています。

Q
日常生活で気をつけるべきこと(食事、運動など)はありますか?
A

術後安定している患者さんは、食事をしっかりとってもらっていて、特別心臓用処方食などは推奨していません。年齢に見合ったものを食べてもらっています。ヒトと同様、足腰が弱ってくる子が多いので、運動も積極的に実施してもらっています。