ASDは左右の心房、VSDは左右の心室の間に発生の段階で穴が残ってしまう病気です。穴が小さい場合は治療をせずに定期健診することも可能ですが、心不全を引き起こす可能性がある場合は、できるだけ早く穴を塞ぐ外科的な治療法が必要になります。
- 房室中隔欠損症に対しては、カテーテル治療または人工心肺を用いて欠損孔の直接閉鎖を実施します。
大動脈と肺動脈の間には、もともと胎児の時に必要な動脈管という血管が走っています。生まれるとすぐになくなっていくのですが、まれに動脈管が残ってしまう場合があります。動脈管が開存していると、肺への血流が増えて心臓に負荷がかかり心不全へと進行します。このPDAは、カテーテルや外科的な治療によって根治が可能です。
- 当施設では最も多い先天性心疾患で、外科的に直接結紮するか、カテーテル治療による治療を実施します。直接法のメリットは確実に結紮ができ、体重に関係なく手術できます(外科医の経験では600〜700g程度の子犬での経験あり)。カテーテルのメリットは傷口が小さいことです。
肺に血液を送る肺動脈弁(または付近)が狭窄して血液が流れにくくなる病気です。狭窄が重度でない場合は無治療で行く場合もありますし、心拍数を低下させる薬で治療していきます。狭窄が重度で右心系に重度に負担がかかる場合はバルーン拡張術と呼ばれる低侵襲のカテーテル治療、カテーテル治療の反応が悪い場合は、開胸手術をして治療します。この病気の怖いところは症状が出にくいところになりますので、適切な検査をして、治療をうけてください。
- 肺動脈狭窄症に対しては、透視下で侵襲性の低いカテーテルによる治療を行います。
- カテーテル治療適応外、又はカテーテルにより狭窄部解除が困難な症例では、人工心肺を用いて肺動脈弁切開術を行います。
心臓腫瘍には心基底部腫瘍と呼ばれる心臓の頭のほうにできるものと、心臓そのものにできるものがあります。心基底部腫瘍は一般的にケモデクトーマと呼ばれる腫瘍が多く、この場合心膜切開を実施することが多いです。心臓の右心耳にできるものとしては血管肉腫が多く、腫瘍の浸潤の程度によっては手術で取れることもあります。
- 心基底部腫瘤に関しては、切除困難である可能性が非常に高いですが、心膜切開を実施することで心嚢水貯留を抑制できます。また、予後が改善することが報告されています。
- 右心耳に発生する腫瘤は外科的に切除できることもあります。できない場合は伴った出血をとめる手術をすることもあります。
心拍数が低下して失神やふらつきを起こす疾患です。よく、脳神経の疾患と間違われることがあります。診断は心電図検査、ホルター心電図を実施して行います。通常は人と同様にペースメーカー治療を実施します。
- 徐脈性不整脈には、ペースメーカーの設置が有効です。
- 失神をくり返す高度房室ブロック(不整脈)の猫にペース メーカーの埋め込みを行った際のレントゲン写真です。術後、失神は完全に消失し元気になりました。
動物の心臓病には、人間と同じように生まれながれにして持つ先天性奇形と、高齢になるにつれて発症する後天性奇形に大きく分かれます。どちらにしても適切な検査、治療が必要になります。